建設工事の契約で注意すること6選!口頭での契約はNG?契約書の記載事項は?


建設工事を施工する際に欠かせないのが、契約の締結

発注者と元請業者間で交わすもの、元請業者と下請業者間で交わすものなど、工事に係る契約書は多岐にわたります。

契約書やその周辺の事務作業は、どうしても気が向かず、定められているルールなども確認できてない…という方もおられるのではないでしょうか?

そこで今回は、建設工事の契約で注意すること6選をご紹介します!

契約のルールについて確認したいという方は、ぜひご覧ください。

執筆にあたって参考にした資料はコチラ(国土交通省が発行しているガイドラインです)

参考:建設業法令遵守ガイドライン 国土交通省不動産・建設経済局建設業課

1.工事の着工前に書面で契約する

まず、建設工事の契約は工事の着工前に書面でおこなうこととされています。

ポイントは、「着工前」「書面」です。

着工してからの契約締結は、NGです。

スケジュール的にタイトな場合もありますが、着工前に契約締結ができるよう、余裕を持った日程調整を心がけましょう

また、原則として、契約は書面で締結します。

何度も取引をしていると、馴染みの業者さんだから口頭で契約を交わしても良いと思いがちです。

しかし、下請業者が大きな負担を被る片務的な内容の契約を防ぐためにも、書面で契約することとされています。

書面での契約については、建設業法にも記載があります。

建設工事の請負契約の当事者は、前条の趣旨に従つて、契約の締結に際して次に掲げる事項を書面に記載し、署名又は記名押印をして相互に交付しなければならない。

建設業法第19条

2.契約書面に必要な事項が定められている

契約書に記載する事項は、建設業法で定められています

  1. 工事内容
  2. 請負代金の額
  3. 工事着手の時期及び工事完成の時期
  4. 工事を施工しない日又は時間帯の定めをするときは、その内容
  5. 請負代金の全部又は一部の前金払又は出来形部分に対する支払の定めをするときは、その支払の時期及び方法
  6. 当事者の一方から設計変更又は工事着手の延期若しくは工事の全部若しくは一部の中止の申出があつた場合における工期の変更、請負代金の額の変更又は損害の負担及びそれらの額の算定方法に関する定め
  7. 天災その他不可抗力による工期の変更又は損害の負担及びその額の算定方法に関する定め
  8. 価格等(物価統制令(昭和二十一年勅令第百十八号)第二条に規定する価格等をいう。)の変動若しくは変更に基づく請負代金の額又は工事内容の変更
  9. 工事の施工により第三者が損害を受けた場合における賠償金の負担に関する定め
  10. 注文者が工事に使用する資材を提供し、又は建設機械その他の機械を貸与するときは、その内容及び方法に関する定め
  11. 注文者が工事の全部又は一部の完成を確認するための検査の時期及び方法並びに引渡しの時期
  12. 工事完成後における請負代金の支払の時期及び方法
  13. 工事の目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合におけるその不適合を担保すべき責任又は当該責任の履行に関して講ずべき保証保険契約の締結その他の措置に関する定めをするときは、その内容
  14. 各当事者の履行の遅滞その他債務の不履行の場合における遅延利息、違約金その他の損害金
  15. 契約に関する紛争の解決方法
  16. その他国土交通省令で定める事項

引用:建設業法第19条

かなり詳細に記載内容が組まれていることがわかります。

また、1.工事内容については、○○工事一式というようなあいまいな表現は避け、下請業者の施工範囲や施工条件が具体的に記載されている必要があります。

3.注文書・請書による契約は一定要件を満たす必要がある

契約書を交わさず、注文書と請書の交換によって契約を締結する場合もあるでしょう。

もちろん、注文書と請書によって契約をすることは可能ですが、一定の要件を満たす必要があります

建設業法令遵守ガイドラインを参照し、要件についてまとめてみました。

まず、当事者間で基本契約書を取り交わした上で、具体の取引については注文書及び請書の交換による場合は、以下の要件を満たす必要があります。

  1. 基本契約書には、建設業法第19条第1項第5号から第15号に掲げる事項(2.契約書面に必要な事項が定められているリスト中の5から15までの事項。ただし、注文書及び請書に個別に記載される事項を除く。)を記載し、当事者の署名又は記名押印をして相互に交付すること。
  2. 注文書及び請書には、建設業法第19条第1項第1号から第4号までに掲げる事項(2.契約書面に必要な事項が定められているリスト中の1から4までの事項)その他必要な事項を記載すること。
  3. 注文書及び請書には、それぞれ注文書及び請書に記載されている事項以外の事項については基本契約書の定めによるべきことが明記されていること。
  4. 注文書には注文者が、請書には請負者がそれぞれ署名又は記名押印すること。

また、基本契約書を交わさず、注文書と請書の交換のみで契約を締結する場合は、以下の要件を満たす必要があります。

  1. 注文書及び請書のそれぞれに、同一の内容の契約約款を添付又は印刷すること。
  2. 契約約款には、建設業法第19条第1項第5号から第15号に掲げる事項(2.契約書面に必要な事項が定められているリスト中の5から15までの事項。ただし、注文書及び請書に個別に記載される事項を除く。)を記載すること。
  3. 注文書又は請書と契約約款が複数枚に及ぶ場合には、割印を押すこと。
  4. 注文書及び請書の個別的記載欄には、建設業法第19条第1項第1号から第4号までに掲げる事項(2.契約書面に必要な事項が定められているリスト中の1から4までの事項)その他必要な事項を記載すること。
  5. 注文書及び請書の個別的記載欄には、それぞれの個別的記載欄に記載されている事項以外の事項については契約約款の定めによるべきことが明記されていること。
  6. 注文書には注文者が、請書には請負者がそれぞれ署名又は記名押印すること。

4.建設工事標準下請契約約款による契約が基本

また、契約を締結するときは建設工事標準下請契約約款、またはこれに準拠した内容を持つ契約書によるのが基本です。

建設業法第18条には、このような規定があります。

建設工事の請負契約の当事者は、各々の対等な立場における合意に基いて公正な契約を締結し、信義に従つて誠実にこれを履行しなければならない。

建設業法第18条

この条文の趣旨を踏まえると、建設工事標準下請契約約款、またはこれに準拠した内容を持つ契約書を用いて契約することが基本になります。

ちなみに、建設工事標準下請契約約款のPDFは国土交通省が公開しています。

建設工事標準下請契約約款 国土交通省

5.片務的な契約は不適当

上記の建設業法第18条にも記載がありますが、建設工事の請負契約の当事者は、対等な立場で契約を締結するものとされています。

つまり、どちらか一方の負担が大きすぎたり、契約内容が不平等になっていてはいけないということです。

不平等であったり、どちらか一方に過大な負担を課す契約を片務的な契約といいます。

こうした片務的な契約内容で契約書を作成しないよう、元請業者、下請業者双方が注意する必要があります。

6.一定規模以上の解体工事はさらに記載事項が増える

一定規模以上の解体工事について契約を締結するときは、記載すべき事項がさらに増えます

一定規模とは、具体的には次のような規模を指します。

  • 建築物に係る解体工事…当該建築物(当該解体工事に係る部分に限る。)の床面積の合計が80㎡
  • 建築物に係る新築又は増築の工事…当該建築物(増築の工事にあっては、当該工事に係る部分に限る。)の床面積の合計が500㎡
  • 建築物に係る新築工事等…その請負代金の額が1億円
  • 建築物以外のものに係る解体工事又は新築工事等…その請負代金の額が500万円

追加される記載事項は、以下の4つです。

  1. 分別解体等の方法
  2. 解体工事に要する費用
  3. 再資源化等をするための施設の名称及び所在地
  4. 再資源化等に要する費用

解体工事の発注・受注する際には気を付けるべきポイントのひとつです。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

今回は、建設工事の契約で注意すること6選をご紹介しました。

契約ひとつとっても、様々なルールのもとで業務を進めていくべきことがわかります。

今回の記事が、少しでも契約の締結について考えるきっかけになったなら幸いです。

ここまでお読みいただきありがとうございました!

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