主任技術者とは、工事現場の管理をつかさどる技術者のことです。
人手不足が叫ばれる昨今、建設業界でも技術者の不足が問題となっています。
主任技術者は元請・下請問わず、現場に設置されなければなりません。
ただ、技術者が不足していると、現場に設置する主任技術者の人材が足りないという事態に陥りかねません。
そこで、「主任技術者が複数の現場を担当できれば、人材不足も解決できるのではないか?」という発想が出てきました。
そこで今回は、主任技術者は複数の工事現場を兼務できるのかについて簡単に解説していきます。
主任技術者が現場を兼務できるケース
結論からいうと、ケースによって主任技術者は複数の工事現場を兼務することができます。
主任技術者には、専任の場合と非専任の場合の2つの種類があります。
複数の工事現場を兼務することができるのは、原則として主任技術者が非専任の場合だけです。
専任の場合は、1つの現場しか受け持つことができません。
では、主任技術者の専任と非専任は、どのように判断されるのでしょうか?
主任技術者が専任で業務を行うかどうかは、工事の請負金額によって決まります。
請負金額4,000万円(建築一式工事の場合は8,000万円)以上の個人住宅・長屋を除くほとんどの工事では、主任技術者を専任配置しなければなりません。
これは、下請工事でも適用されるので注意しましょう。
法第二十六条第三項の政令で定める重要な建設工事は、次の各号のいずれかに該当する建設工事で工事一件の請負代金の額が四千万円(当該建設工事が建築一式工事である場合にあつては、八千万円)以上のものとする。
建設業法施行令第27条
一 国又は地方公共団体が注文者である施設又は工作物に関する建設工事
二 第十五条第一号及び第三号に掲げる施設又は工作物に関する建設工事
三 次に掲げる施設又は工作物に関する建設工事
イ 石油パイプライン事業法(昭和四十七年法律第百五号)第五条第二項第二号に規定する事業用施設
ロ 電気通信事業法(昭和五十九年法律第八十六号)第二条第五号に規定する電気通信事業者(同法第九条第一号に規定する電気通信回線設備を設置するものに限る。)が同条第四号に規定する電気通信事業の用に供する施設
ハ 放送法(昭和二十五年法律第百三十二号)第二条第二十三号に規定する基幹放送事業者又は同条第二十四号に規定する基幹放送局提供事業者が同条第一号に規定する放送の用に供する施設(鉄骨造又は鉄筋コンクリート造の塔その他これに類する施設に限る。)
ニ 学校
ホ 図書館、美術館、博物館又は展示場
ヘ 社会福祉法(昭和二十六年法律第四十五号)第二条第一項に規定する社会福祉事業の用に供する施設
ト 病院又は診療所
チ 火葬場、と畜場又は廃棄物処理施設
リ 熱供給事業法(昭和四十七年法律第八十八号)第二条第四項に規定する熱供給施設
ヌ 集会場又は公会堂
ル 市場又は百貨店
ヲ 事務所
ワ ホテル又は旅館
カ 共同住宅、寄宿舎又は下宿
ヨ 公衆浴場
タ 興行場又はダンスホール
レ 神社、寺院又は教会
ソ 工場、ドック又は倉庫
ツ 展望塔
逆にいうと、請負金額が4,000万円未満の工事等であれば、主任技術者の専任は求められず、複数の現場の兼務が可能になるということです。
ただ、むやみに複数の現場を兼務できるわけではなく、職務を誠実に行うことが可能な範囲に限られていることに留意しましょう。
また、例外的に専任の主任技術者でも複数の現場を兼務できるケースがあります。
前項に規定する建設工事のうち密接な関係のある二以上の建設工事を同一の建設業者が同一の場所又は近接した場所において施工するものについては、同一の専任の主任技術者がこれらの建設工事を管理することができる。
建設業法施行令第27条第2項
公共性のある重要な建設工事のうち、密接な関係のある2以上の建設工事を同一の建設業者が同一の場所または近接した場所において施工する場合は、専任の主任技術者でも複数の現場を兼務することが可能です。
「近接した場所」とは、工事現場の相互間隔が10㎞程度であることと国土交通省の資料で説明されています。
参考:工事現場に配置する技術者とは 国土交通省
専任の監理・主任技術者が必要な工事とは 国土交通省
専任技術者と主任技術者の違いについてはコチラ
監理技術者の場合
主任技術者の上位のような役職として、監理技術者があります。
特定建設業許可が必要な工事では、主任技術者ではなく監理技術者の設置が必要になります。
監理技術者になるためには、主任技術者よりも厳しい要件をクリアしなければなりません。
そして、専任の主任技術者でも複数の現場を兼務できる場合があると先述しましたが、監理技術者にはこの規定が適用されません。
ただし、以下の要件を満たせば、複数の工事を一つの工事とみなすことで、同一の監理技術者が工事全体を統轄できるようになります。
- 同一あるいは別々の発注者が、同一の建設業者と契約を締結する場合
- 契約工期の重複する複数の請負契約に係る工事であること
- それぞれの工事の対象となる工作物等に一体性が認められること
参考:二以上の工事を同一の監理技術者等が兼任できる場合 国土交通省
監理技術者等が工事現場に専任すべき工事 国土交通省
まとめ
いかがでしたでしょうか?
今回は主任技術者の複数の工事現場の兼務について簡単に解説しました。
監理技術者、主任技術者の設置についてはかなり複雑に規定が組まれているため、不明な点があれば行政庁に問い合わせて確認しておくことも大切です。
ここまでお読みいただきありがとうございました!
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