建設工事に使う材料の費用が高騰した!どのような対応が必要?


「建設工事を受注してから原材料費が高騰したせいで金額にブレが出そうなんだけど…」

「材料の納品が遅れて工期に影響が出そう…」

このようにお悩みの方はいないでしょうか。

建設工事を施工するにあたって、原材料は欠かせないものです。

しかし、昨今の世情で著しく原材料費が高騰したり、原材料の納期が遅れてしまったりする事態に見舞われることがときどきあります。

そこで今回は、工事の契約締結後に原材料費が高騰した場合にするべき対応を、国土交通省の資料を参照しながら紹介します。

原材料費が高騰したときの対応について悩んでいる方は、ぜひご覧ください。

状況に応じて適切な対応が必要

まず、原材料費の高騰や納期の遅れが生じた時に、何もせず放っておくことは推奨されません

下請業者の立場で、原材料費の高騰や納期の遅れに直面した場合、元請業者に協議を申し出ることができます

元請業者は、下請業者から協議の申し出があった場合はそれに応じ、契約変更の手続きを行うなど、適切な対応を行う必要があります。

さらに、請負契約の締結に当たっては、建設工事標準下請契約約款に記載の請負代金の変更に関する規定及び工期の変更に関する規定を適切に設定・運用することとされており、約款に一通り目を通しておくことが大切でしょう。

工期内に賃金又は物価の変動により請負代金額が不適当となり、これを変更する必要があると認められるときは、元請負人と下請負人とが協議して請負代金額を変更する。


2 元請負人と発注者との間の請負契約において、この工事を含む元請工事の部分について、賃金又は物価の変動を理由にして請負代金額が変更されたときは、元請負人又は下請負人は、相手方に対し、前項の協議を求めることができる。

建設工事標準下請契約約款第22条

下請負人は、天候の不良等その責めに帰することができない理由その他の正当な理由により工期内に工事を完成することができないときは、元請負人に対して、遅滞なくその理由を明らかにした書面をもって工期の延長を求めることができる。この場合における延長日数は、元請負人と下請負人とが協議して定める。


2 前項の規定により工期を延長する場合において、必要があると認められるときは、元請負人と下請負人とが協議して請負代金額を変更する。

建設工事標準下請契約約款第19条

また、下請中小企業振興法に基づく振興基準には、このような記載があります。

労務費、原材料費、エネルギー価格等のコストが増加した場合には、親事業者は、予め定めた価格改定タイミングはもちろんのこと、その期中においても、価格変更を柔軟に行うものとする。特に原材料費やエネルギーコストの高騰があった場合には、適切なコスト増加分の全額転嫁を目指すものとする。

振興基準

振興基準中の「親事業者」は、いわゆる元請業者のことですね。

こうした基準があることにも留意して、元請業者は適切な対応を行う必要があります。

参考:建設工事標準下請契約約款 中央建設業審議会
   振興基準 中小企業庁

対応しなかった場合

では、下請業者からの協議の申し出に元請業者が応じなかった場合はどうなるのでしょうか。

結論からいうと、建設業法の「不当に低い請負代金の禁止」や「著しく短い工期の禁止」に違反する場合があります

不当に低い請負代金についてはコチラの記事をご覧ください

著しく短い工期についてはコチラの記事をご覧ください

不当に低い請負代金の禁止は、はじめに契約を締結したときに不当に低い請負代金を強制することに限られず、原材料費が高騰したのに、代金の増額をしないことなども含まれます

つまり、元請業者が、自己の取引上の地位を不当に利用して、原材料費が高騰しているにもかかわらず代金の増額を行わない場合、通常必要と認められる原価に満たず、不当に低い請負代金と判断される可能性があります。

同様に、著しく短い工期の禁止は、初めに契約を締結したときに著しく短い工期を設定することに限られません。

原材料の納品の遅れなどによって工期を変更する必要があるにもかかわらず、元請業者が工期の変更を行わない場合は、著しく短い工期の禁止に抵触する場合があります

コスト上昇を加味しない場合は独占禁止法違反のおそれ

原材料費の上昇を加味しなかった場合は、建設業法だけでなく、独占禁止法にも違反するおそれがあります。

独占禁止法中では、以下の行為が禁止されています。

取引の相手方からの取引に係る商品の受領を拒み、取引の相手方から取引に係る商品を受領した後当該商品を当該取引の相手方に引き取らせ、取引の相手方に対して取引の対価の支払を遅らせ、若しくはその額を減じ、その他取引の相手方に不利益となるように取引の条件を設定し、若しくは変更し、又は取引を実施すること。

独占禁止法第2条第9項第5号ハ

上記の行為を行った場合、優越的地位の濫用に該当し、独占禁止法違反になります。

具体的にどのような行為が優越的地位の濫用にあたるかは、公正取引委員会のホームページにて説明があります。

一部引用してみましょう。

1 労務費,原材料価格,エネルギーコスト等のコストの上昇分の取引価格への反映の必要性について,価格の交渉の場において明示的に協議することなく,従来どおりに取引価格を据え置くこと

2 労務費,原材料価格,エネルギーコスト等のコストが上昇したため,取引の相手方が取引価格の引上げを求めたにもかかわらず,価格転嫁をしない理由を書面,電子メール等で取引の相手方に回答することなく,従来どおりに取引価格を据え置くこと

公正取引委員会 よくある質問コーナー

上記の行為が独占禁止法に抵触するおそれがあります。

原材料費の上昇について協議せず、工事の代金を据え置くことは、独占禁止法の禁止行為に該当する可能性が著しく高いといえるでしょう。

参考:「令和5年中小事業者等取引公正化推進アクションプラン」の概要 公正取引委員会

まとめ

いかがでしたか?

今回は、工事の契約締結後に原材料費が高騰した場合にするべき対応を簡単に解説しました。

原材料費関連のトラブルは、予期せぬ時に起こるものです。

対応について少し知識があるだけでも、解決スピードは上がるといえます!

ここまでお読みいただきありがとうございました!

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