建設業の専門用語として、「指値発注」という言葉があります。
普段の生活ではなかなか聞くことのない言葉のため、この記事で初めて知ったという人も少なくないでしょう。
しかし、その知名度とは裏腹に、指値発注は建設業において重要な意味がある言葉です。
そこで今回は、指値発注とは何か、指値発注によって起こる建設業法違反、元請業者が気を付けるべきことについて簡単に解説します。
指値発注とは
指値発注とは、元請業者が下請業者と契約を交わす際、十分に協議することなく、一方的な価格設定(このように決められた価格を指値といいます)をし、下請業者に契約を締結させることをいいます。
建設業法では、請負契約の原則が明文化されています。
建設工事の請負契約の当事者は、各々の対等な立場における合意に基いて公正な契約を締結し、信義に従つて誠実にこれを履行しなければならない。
建設業法第18条
指値発注は、元請業者が一方的に価格を決める行為であり、建設業法第18条に記載の「各々の対等な立場における合意に基いて公正な契約を締結し」という文言に反しているといえます。
国土交通省が発行している建設業法法令遵守ガイドラインを参照すると、指値発注の例としてこのような行為が挙げられています。
- 元請下請間で請負代金の額に関する合意が得られていない段階で、下請負人に工事を着手させ、工事の施工途中又は工事終了後に元請負人が下請負人との協議に応じることなく下請代金の額を一方的に決定し、その額で下請契約を締結した場合
- 元請負人が、下請負人が見積りを行うための期間を設けることなく、自らの予算額を下請負人に提示し、下請契約締結の判断をその場で行わせ、その額で下請契約を締結した場合
1と2はどちらも建設業法違反となる行為事例です。
行為事例を観察すると、やはりどちらの事例も、下請業者と協議や合意することなく、一方的な押し付けで下請代金を決めていることがわかります。
指値発注によって起こる建設業法違反
指値発注によって、下請業者はさまざまなデメリットを被ることが予想されます。
ここでは、建設業法法令遵守ガイドラインを参照し、指値発注によって起こる代表的な建設業法違反の事例を紹介します。
不当に低い請負代金
指値発注によって、建設業法の「不当に低い請負代金の禁止」に抵触する場合があります。
不当に低い請負代金の禁止についてはコチラの記事をご覧ください
指値発注は、元請業者が自己の取引上の地位を不当に利用した結果と考えられます。
この時、下請業者の請負代金の金額が通常必要と認められる原価に満たないと考えられる場合には、建設業法の「不当に低い請負代金の禁止」に違反するおそれがあるといえるでしょう。
また、元請業者が下請業者に対して、通常の工期よりも短い工期を示した場合は、通常必要と認められる原価は短い工期に合わせて設定されるべきだとされています。
短い工期ではなく、通常の工期に合わせて指値をし、その価額が通常必要と認められる原価を下回る場合には、建設業法違反になるおそれがあります。
見積条件の提示
また、元請業者が下請業者に指値をし、下請業者に十分な期間を与えることなく契約を締結させる行為は、建設業法に規定されている「見積りを行うための一定期間の確保」に違反します。
見積期間の提示についてはコチラの記事をご覧ください
書面による契約締結
元請業者と下請業者の間で、請負代金の金額に対する合意が得られず、書面による契約締結もされていない段階で、元請業者が下請業者に工事を強要し、その後に請負代金を指値で決定する行為は、建設業法の「書面での契約締結」に違反します。
建設工事の契約で注意することについてはコチラの記事をご覧ください
元請業者は十分な協議を
指値発注は一方的に請負代金を決める行為であり、健全な関係性を壊す行為だといえます。
指値発注を避けるために、算出した請負代金の根拠を明確にしておくなど、元請業者は対策を講じる必要があるでしょう。
また、元請業者と下請業者間で十分な協議を行うことも指値発注を避けることに効果的といえます。
参考:建設業法令遵守ガイドライン 国土交通省不動産・建設経済局建設業課
まとめ
いかがでしたか?
今回は指値発注とは何か、指値発注によって起こる建設業法違反、元請業者が気を付けるべきことについて簡単に解説しました。
知らず知らずのうちに指値発注をしてしまっている場合もあります。
この記事が、請負代金の金額の設定について振り返るきっかけになったなら幸いです。
ここまでお読みいただきありがとうございました!
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